銅の切削加工における注意点と加工事例について
銅は、優れた導電性や高い熱伝導性、耐腐食性などの特性を持ち 、さまざまな産業で幅広く利用されています。しかし、銅の切削加工には特有の条件があり、適切な加工技術が求められます。本記事では、銅の特徴や代表的な材料の種類や、切削加工のポイントを解説します。また、銅の切削加工を得意とするバンテックでの実績についてもご紹介します。
銅の特徴
銅は、ほかの金属にはない特有の物理的・化学的特性を持ち、多くの工業用途で不可欠な材料 です。以下では、その主な特徴を紹介します。
優れた導電性
銅は、商業用金属の中で、銀に次いで最高の導電性を持ちます 。例えば、銅の電導度は導電材料である鉄の約6倍です。銀より汎用性が高いこともあり、電気配線や電子機器の主要な素材として広く採用されています。特に、電気用タフピッチ銅(C1100)は導電性が高く、多くの電子機器や電気機器で使用されています。
高い熱伝導性
銅は、熱伝導性が極めて高く、熱を効率的に拡散することから、冷却装置やヒートシンク、さらには電子機器の冷却部材として利用されます。銅の切削加工時には、この 放熱性の良さを使って切削条件を設定しますが、熱により軟化しやすいため反りやすく、加工中の熱管理が重要です。
耐腐食性
銅は自然環境下での耐腐食性が非常高く、特に塩水や湿度の高い環境でも長期間使用することができます。このため、海洋設備や化学プラントなどの過酷な環境でも使用されます。
銅の材料の種類
銅にはさまざまな種類があります。ここでは、代表的な電気用タフピッチ銅(C1100)と無酸素銅(C1020)について、その特徴と用途を紹介します。
C1100: 電気用タフピッチ銅 (Electrolytic Tough Pitch Copper, ETP)
特徴と特性
C1100は、99.9%以上の純銅を含む電気用銅で、優れた導電性が特徴です。この高純度の銅は電気伝導率が高く電気信号のロスが少ないため、電力ケーブルや導体、その他の電気機器に広く使用されます。加工性も高く切削加工で扱いやすい素材です。
用途
C1100は主に電気機器の配線やコネクタ、バスバーなどに使用されます。電気的性能を求められる部品に最適です。
ただし、残留酸素が0.02%~0.05%程度含まれているため、高温環境では水素と残留酸素が反応して、水蒸気になり鋼材に亀裂が入るなどの強度低下を起こします。これを水素脆化(ぜいか) といいます。C1100を加熱するなど、熱が入る環境で使用する際は注意が必要です。
C1020: 無酸素銅 (Oxygen-Free Copper, OFC)
特徴と特性
C1020は、酸素含有量が極めて少ない無酸素銅で、電気用タフピッチ銅よりもさらに高い導電性を持ちます。残留酸素が少ないため水素脆化が起こりにくく、高温環境でも安定した特性を発揮します。この素材は高周波信号の伝送や音響機器に特化しており、特にオーディオケーブルや高精度な電子部品に多く使用されます。また、無酸素銅は純度が高いことから、安定した電気特性を提供します。
用途
C1020は、音響ケーブルや医療用電子機器、高精度なセンサーなど、高い安定した導電性が必要な用途に広く利用されています。
銅の切削加工のポイント
銅の切削加工のポイントを理解することで、加工精度を向上させ、製品の品質を確保することが可能です。
適切な工具の選定
銅の切削加工では、適切な工具を選定することが不可欠です。銅は柔らかいため、 切粉が刃物に融着しやすく、切 粉がうまく排出されるような刃先が鋭利な工具が求められます。このような工具により、バリや表面荒れを最小限に抑えることができます。
適切な切削速度
銅の高い熱伝導性を考慮した切削速度を設定することが重要です。切削速度が速すぎると工具の過熱を招きバリが出たり、反ってしまったりなど、加工精度を低下させる可能性があります。製品の品質を確保するために加工工程に切削速度の適切な設定が必要 です。
冷却材の使用
銅の切削加工では、冷却材の適切な使用が重要です。加工中に発生する熱を効率的に除去するため、適切な冷却材を使用する必要があります。水溶性の冷却材では銅と反応して腐食してしまうため、油性の冷却材や、エアー(空気を吹き付ける冷却)を用います。
バンテックでの実績
バンテックは、銅の切削加工で豊富な実績があります。特に、C1100やC1020といった高純度銅の加工に高い評価をいただいています。電気機器、精密機械部品など、幅広い分野での納入経験をもとに、お客様のニーズに合わせた最適な加工条件を提案し、品質の高い製品を提供します。
材質:C1020(無酸素銅)
放電加工用の電極として使用するための依頼品です。電極用に先端を細く加工しています。
銅は熱伝導がよいために加工時に反りやすく、また、穴径やタップも切削時に発生する熱で変形しやすいため、一度加工し冷まし た後に仕上げの加工をするなど、銅の特性を考慮して工程の順序などを設定しています。
その他の加工事例についてはこちら「実績紹介」をご覧ください。
まとめ
銅の切削加工は、銅の導電性や熱伝導性を最大限に活かす加工条件が求められます。本記事で紹介したC1100やC1020などの材料特性を理解し、適切な工具や切削条件を選定することで、加工精度を向上させることが可能です。
当社では、豊富な実績と高い技術力を活かし、銅の切削加工でお客様の期待に応える製品を提供しています。銅加工に関するご相談やご依頼がございましたら、ぜひバンテックにご連絡ください。