隅Rとは?切削加工の基礎知識から当社の実績まで詳しく解説

隅Rとは、部品や製品の角部分における丸みの部分を指します。一般的には、切削加工の過程で工具の形状や加工制約によって生じるものです。この「R」は半径 (Radius) の略で、設計図面上では公差として指定されます。
切削加工で隅R(すみアール)が発生するのは仕方なく、部品の外観や精度を左右する重要な要素であるため、設計や加工の工程でうまく付き合っていく必要があります。隅Rを適切に考慮することで、加工効率の向上やコスト削減にもつながります。本記事では、隅Rの基礎知識から隅Rを最小化する方法、そしてバンテックでの具体的な隅Rの加工事例までを詳しく解説します。
隅Rができる理由
切削加工で用いる切削工具自体に丸みがあるため、加工品の角は完全な直角にはならず、自然に隅Rが発生します。その工具の丸みの半径が小さければ小さいほど、隅Rの半径は小さくなりなりピン角(丸みのない角)に近づきますが、工具の丸み半径を小さくする必要があります。その結果、切削面積が減り加工効率が下がってしまいます。 一方で、隅Rの半径を大きくすれば大きくするほど、半径が大きい工具を使えるため、加工効率を上げることができます。
隅Rができる切削加工機
加工に伴い、隅Rが生じる代表的な切削加工機を紹介します。
フライス盤

図1:フライス盤で生じる隅R
フライス盤では、エンドミルなどのドリル形状の工具を回転させながら素材を削ります。エンドミルによるフライス加工では角部を鋭利に仕上げることが困難であり、工具の半径のサイズに応じた自然な丸み=隅Rが形成されます。
旋盤
旋盤では、素材を回転させながら工具を当てて削ります。工具の刃先に丸みがついているため、その丸みの半径R程度の丸みが生じ、結果として隅Rが発生します。特に円筒状部品の段になっている部分の加工では、工具の形状により避けられない現象です。

図2:旋盤で生じる隅R
隅Rをなくせるのか
切削加工のみで隅Rを完全になくし、ピン角を作ることは困難です。丸みがない角が必要な場合は研削加工や放電加工を行う場合がありますが、研削盤での追加工や、放電での追加工など工数がかかるため、ピン角が必要なよほどの事情がない限りは採用されません。しかしながら、切削加工でも隅Rを最小化するための工夫は可能です。
R寸法をできるだけ小さくする
設計段階でR寸法を最小限に設定し隅Rを抑えることができます。ただし、工具や加工機の性能限界を考慮する必要があります。具体的には、フライス盤の場合はエンドミルの半径を小さくすることで、旋盤であれば切削工具の刃先のRを小さくすることで、隅Rの半径を小さくすることができます。しかしながら、前述したように加工効率が悪化するなどコスト面での影響が生じます。
段取り替えの追加
加工の工程を細分化し、段取り替えの追加や、専用の工具や加工治具を使用することで隅Rをさらに減らすことができます。より直角に近い仕上がりになりますが、段取りを追加する必要があるため、工数が増えてコストが増加します。

図3:段取り替えをせずに、ドリル加工→エンドミル加工を行う場合

図4:段取り替えを追加し、ドリル加工→エンドミル加工を行う場合
逃げ加工を追加
逃げ加工とは、角の一部を削り取ることで隅Rを除去する方法です。加工時間にはほとんど影響がないため、コストの増加もなく、隅Rを解消できます。加工品の仕様上許容される場合は、この手法が効果的です。

図5:逃げ加工の例
隅Rの図面指示のポイント
適切な隅Rを図面に記載することは、加工精度や製品品質、目標コストを確保するために重要です。図面指示がない場合、加工者は角部の処理方法を判断できません。隅Rの値を明確に指定することで、想定違いを防ぐことができます。切削加工を行う場合、ある程度の隅Rが生じますが、設計上小さなRしか許容できない場合は、研削加工や放電加工といった追加加工が必要となりコスト増加の原因となります。加工上無理のないR寸法を指定することで、加工効率を高めることができます。

図6:隅Rの図面指示の例
バンテックでの実績
当社バンテックは、隅Rにうまく対処した、高精度な加工を数多く手がけております。

図7:バンテックの実績
A5052を材料とした、マシニング加工品です。某大手電子部品メーカからの依頼で100分の1mmの寸法精度が要求された高精度部品です。発注から7日間にて納入対応を行いました。
こちらの製品には、中央の窓の部分にはめあう別部品がありました。はめあいのために窓の隅Rの許容寸法を確認した結果、最終的には逃がし加工を採用し、隅Rを解消しました。熟練した技術者によって、直径1φのエンドミルを用いてマシニング加工を行いました。外観検査と画像測定器による寸法検査を実施し、品質が確保されていることを確認しました。
まとめ
隅Rの発生は切削加工において避けて通れないため、その発生理由を理解することが重要です。加えて、加工方法や隅Rの最小化の手法について理解することで、より優れた設計や加工が可能になります。バンテックでは、多様なニーズに対応する高品質な隅R部分の加工技術と経験があります。ぜひご相談ください。