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技術コラム

加工について

アルミの切削加工における注意点と加工事例について

アルミは加工のしやすさや軽さなど多くのメリットがあることから、様々な分野の部品や装置などの素材として使われており、切削加工にも適した素材と言えます。一方で、アルミを切削加工するには注意する点もあります。
本記事では、アルミの特徴や切削加工におけるメリット・デメリット、切削加工する際の注意点などについてお伝え致します。

アルミニウムの特徴

軽い
アルミニウムの比重は2.7、これは鉄の7.9や銅の8.9の約1/3程度であるため、非常に軽い金属といえます。鉄や銅で重たくて使えない場面でも、アルミを用いれば軽量化に役立ちます。
【主な純金属の比重】
アルミニウム Al 4.506
チタン Ti 4.506
鉄 Fe 7.870
銅 Cu 8.880
金 Au 19.300

錆びにくい
アルミは空気中でアルミ(Al)と酸素(O2)が結び付くことでアルミナ(Al2O3)という酸化皮膜を自己生成します。この酸化皮膜により自ら腐食を未然に防ぐため、アルミは錆びにくいです。

加工しやすい
アルミは機械加工全般おいて加工性に優れています。切削加工においてもアルミの被削性指数率(※切削のしやすさ)は240~120。銅合金(100~70)や鋼(85~50)、鋳鉄(90~50)、錬鉄(50)などと比べると削りやすいと言えます。

熱伝導率が高い
純アルミの熱伝導率は約240(W/m・K)と鉄80.3と比べ約3倍と高く、熱しやすく冷めやすい金属です。

比強度が高い
アルミは比強度(単位重量当りの強度)が高いのが特徴です。

アルミの素材と特徴

JIS(日本産業規格)において、アルミ素材はアルファベットのAと4桁の合金番号で分類されています。 そして、最初の1桁目は添加する金属の種類によって決まっているため、主成分が何なのか見分けることが可能です。それぞれのアルミ合金の種類と特性をご紹介します。

A1000系 純アルミニウム

よく使われる材料:A1050,A1060,A1100
純度が99%以上の純アルミニウムです。導電性や熱伝導性、耐食性に優れています。強度が合金に比べ低く、粘り気があるため精密な切削加工には不向きです。番号の下2桁はアルミの純度を表しています。A1100は99%以上、A1070は99.7%以上、A1050は99.5%以上の純度と定められています。

A2000系 アルミニウム+銅(Al-Cu系)

よく使われる材料:A2011,A2017,A2024
強度向上のため、アルミニウムに銅(Cu)を多く添加した合金です。銅(Cu)が酸化しやすい性質を持つので、耐食性が低くなります。代表的な素材はA2017(ジュラルミン)とA2024(超ジュラルミン)です。

A3000系 アルミニウム+マンガン(Al-Mn系)

よく使われる材料:A3003
アルミニウムにマンガン(Mn)を加えた合金。純アルミニウムの加工性・耐食性を低下させずに、強度を少し上げたものです。切削素材に用いることは少なく、成形素材として使われることが多い合金です。

A4000系 アルミニウム+ケイ素(Al-Si系)

よく使われる材料:A4032
アルミニウムにシリコンを添加することにより、熱による膨張を抑え、耐磨耗性の向上を狙った合金です。耐熱性にも優れるため、鍛造されてピストンなどで使われたりもします。他のアルミ合金よりも融点が低い為、溶接溶加材などでも使われています。基本的に切削加工には用いません。

A5000系 アルミニウム+マグネシウム(Al-Mg系)

よく使われる材料:A5052,A5056
アルミニウムにマグネシウムを添加して強度と耐食性を向上させた合金。加工性にも優れ、アルミニウム合金の中で使用頻度の高い素材です。強度や耐食性も高く、溶接にも向いています。

A6000系 アルミニウム+マグネシウム+ケイ素(Al-Mg-Si系)

よく使われる材料:A6061,A6063
アルミニウムにシリコン(Si)、マグネシウム(Mg)を添加し、5000番系よりも強度と耐食性が優れた合金です。強度、耐食性共に良好で、押出し加工性に優れており、代表的な構造用材として使用されています。特にA6063は優れた押出し性から建築用サッシ等に使用されています。

A7000系 アルミニウム+亜鉛+マグネシウム(Al-Zn-Mg系)

よく使われる材料:A7075
アルミニウムに亜鉛とマグネシウムを化合させ、熱処理を加えた合金です。熱処理により現存するアルミ合金の中で、最も高い強度を誇ります。A7075は超々ジュラルミンと呼ばれ、航空機の部品や車両に多く使用されています。

アルミの加工におけるメリット

部品や装置の軽量化

アルミは鉄などに比べて比重が1/3程度のため、鉄と同じ体積だとアルミは1/3程度となり部品や装置の軽量化に繋がります。また、アルミは比強度が強いという特徴もあるため、十分な強度を維持しながら、部品や装置全体の軽量化が可能です。

複雑形状の加工ができる

アルミは、被削性指数率が高く切削加工時の加工性に優れているため、様々な形状の加工が可能です。そのため、切削加工のノウハウがあることが大前提ですが、アルミは複雑な形状や高精度の加工も可能です。

錆びにくい

純アルミは、アルミナの酸化皮膜を自己生成腐食に強く錆びにくいという特徴があります。更にマグネシウムなどの金属を添加することで耐食性をより一層高めることもできます。

アルミの加工におけるデメリット

熱で溶けやすい

アルミの融点は660℃と、鉄(1536℃)や銅(1084.5℃)など他の金属に比べて熱で溶けやすいのが特徴です。
そのためアルミは、切削加工時に溶けた部材が刃先に溶着してしまう「構成刃先」という現象が起こりやすくなります。構成刃先が発生すると、表面粗さの劣化や加工精度が得られないなどのトラブルが生じてしまいます。
アルミの線膨張係数(※温度変化による寸法変化の割合)は23.6 (10-6/℃)。鉄(11.76)や銅(16.5)などの他の金属と比べると高く、温度変化により寸法が変形しやすいという特徴があります。

アルミ合金を加工する際のポイント(注意点)

工具の選定について

アルミの切削加工には、溶着防止のため切削抵抗のすくい角が少ないシャープな切れ刃が適しています。
切削温度を極力低く抑え、すくい面の粗さ精度を高めて切りくずがスムーズに通過するように対策された広い切りくず排出空間を持つ工具を選定してください。
ダイヤモンドコートなどのコーティングが施された工具は、表面摩擦係数が低く溶着しづらくなり有効です。但し、切削工具代が高額になるため、費用対効果をしっかりと検討する必要もあります。

切削速度について

アルミ合金の切削は溶着及び溶着による構成刃先の形成防止のため高速切削が基本です。
高速切削により切削抵抗が下がり、切削面も滑らかになるというメリットもあります。

冷却について

アルミ合金の切削加工は基本的には冷却を行わない乾式加工ですが、溶着防止のためクーラントを使用するケースもあります。クーラントを使う場合はクーラントの種類によってはアルミ合金と化学反応を起こし、工作物の表面を変質させることがあるので、アルミ合金に適したものを使うようにしましょう。

当社のアルミ合金の切削加工事例のご紹介

製品名:ホルダーヘッド
材質:A5052
加工のポイント:
某OA機器メーカーの1次サプライヤーからのご依頼があった製品です。
高精度が要求された製品で量産前の試作です。
裏表の加工でコーナーRも小さく深さも深い為、精度出しに苦労しました。

その他の加工事例についてはこちら「実績紹介」をご覧ください。

アルミの切削加工はバンテックにご相談下さい

バンテックではアルミの切削加工の豊富な実績が多数あります。特にアルミニウムの複雑形状や難形状の加工を得意としています。
また、自社で設計・デザインも行っているため図面のない状態からのご相談も大歓迎です。
アルミ加工・ステンレス加工、金属加工はバンテックにご相談下さい。

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