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技術コラム

加工について

焼結合金のメリットと加工について

焼結

焼結とは

焼結とは、金属やセラミックスの粉末を融点よりも低い温度で焼き固める技術を指します。この特性を生かして製品を成形する加工方法を焼結加工といいます。
余分な材料のロスが少なかったり、複数の金属粉末を混ぜ合わせて複合材(焼結合金)を作りだしたり、塊からの加工が難しい金属を焼結加工で成形したりといった、さまざまなメリットが焼結加工にはあります。
また、高融点材料でも成形可能です。融点よりも低い温度で成形できるため、鋳造に比べて低いコストで加工ができます。
本記事では、焼結合金の特徴、焼結のメリット、焼結の工程、焼結合金を切削加工する際の留意点などをご紹介します。

焼結合金の特徴

焼結に用いる金属の種類は、鉄、炭素鋼、銅、錫、チタン、ニッケル、モリブデンなどがあります。粉末にできる原料であれば、幅広く用いることができます。焼結合金は、材料となる粉末を組み合わせることで、それぞれの金属特性を持ちます。

高い硬度・耐摩耗性・耐久性

微細な粒子を高温で圧縮し密度の高い構造を形成するため、焼結合金は高い硬度を持ち、耐摩耗性・耐久性にすぐれています。摩耗や摩擦が発生する環境での部品や工具として広く使用され、製品寿命も長くなります。

耐熱性・耐食性

高温でも強度や硬度の低下が少ないため、安定した性能を維持することができ、高温での作業や耐熱部品に適しています。また、高密度で耐食性が高く、腐食性の高い環境で使用される製品に適しています。

焼結のメリット

材料歩留りが高い

材料を削って製品を作る方法と比較し、焼結に必要な材料は成形に必要な分量で済むため、削り出しの際の切粉や材料の余り等の材料ロスが少なく、生産コストの抑制につながります。

形状や配合の自由度が高い

焼結では、粉末状の材料を金型に充填してプレス機で圧縮する方法を用いるため、金属を曲げたり切ったりする加工と比べ、形状の自由度が高く、複雑な形状も成形できます。自動車のエンジン部品やトランスミッション部品、電子機器のセンサー類、産業機械のバルブ類などさまざまな分野で利用されています。

気孔を含むため軽量化が可能

焼結は、気孔を含むため製品の軽量化につながります。
一方、鋳造と比較すると密度が低いため、強度や耐久性に劣るという面もあります。

焼結の工程

混合

製品の性質に合わせて、粉末金属を決められた割合で配合します。焼結しにくい場合には、焼結助剤と呼ばれる添加剤を加えることもあります。混合機を用いて粉末を均一に混ぜ合わせます。

成形

混合させた粉末金属を金型に充填し、上下方向から加圧して押し固めます。この段階でできあがったものを成形体と呼びます。成形体の段階ではもろく、簡単に割れてしまいます。

焼結

焼結炉で成形体を焼き固めます。金属が融解する温度より低い800~1,300度前後で加熱します。できあがったものを焼結体と呼びます。焼結品は金属同士が結合しているため成形体より高い強度を持ちます。

二次加工

焼結体を必要に応じて加工します。上記の通り、複雑形状を焼結により実現させることができますが、より寸法精度を高める場合には機械加工の工程を追加します。旋盤やフライス盤、マシニングセンタなどを使用します。
さらに強度を高めたい場合には、焼き入れの工程を加えます。

焼結

金属成形品の種類

焼結加工は、前述の通り金属の材料を金型に流し込んで成形する加工方法です。金型を使用した加工方法には他にも、①鋳造②ダイカスト③射出成形などがあります。

鋳造

鋳造(ちゅうぞう)は、金属や木材の型に、溶湯(溶かした金属)を流し込んで成形する加工方法です。型のことを鋳型(いがた)と呼び、鋳造で作ったものを鋳物(いもの)といいます。
別記事「金属における3D加工(3次元加工)とは?」もご参照下さい。

ダイカスト

ダイカストは、溶湯を高圧で射出して特定の形状に成形する加工方法です。ダイカストマシンという機械を用いて高圧で金型に注入する点が、溶湯を重力で流し込む鋳造と異なります。おもにアルミニウム、マグネシウム、亜鉛などの非鉄合金を用います。ダイカストは溶湯の充填速度が速いため大量生産に向いた加工方法です。

射出成型

射出成型は、熱可塑性樹脂やゴムなどの材料を加熱して溶融させ、射出成型機から高圧で射出して成形する加工方法です。プラスチック製品やゴム製品の大量生産に広く利用されています。

焼結合金の加工時の留意点・ポイント

適切な切削条件

一般的に、焼結合金は高い硬度を持ちますが、同時にもろい性質があります。ただ、硬度やもろさは一定ではありません。そのため、焼結合金を切削加工する場合は適切な切削条件を選択することが重要です。金属の種類や割合などを踏まえ、切削速度や切り込み量、冷却方法などを適切に選択することで、製品の破損や工具の摩耗を最小限に抑えることができます。

適切な工具・治具

焼結合金の切削には、適切な工具の選択が重要です。硬質な焼結合金を加工するためには、耐摩耗性や耐熱性にすぐれた切削工具が必要です。また、製品の形状によっては治具を工夫して加工することで安定した品質を保つことができます。

当社の焼結材の加工事例

焼結
メーカーの一次サプライヤー様からの焼結合金を用いた試作品加工の依頼です。
お客様から提供された焼結合金の丸材に切削加工を施しました。
本製品は高い精度を求められる製品で、焼結合金は加工する刃が減りやすいためエンドミルを多く準備しました。製品が欠けるのを防ぐために早めの送り速度で切り込み量を少なくして加工を行いました。
焼結合金は硬度が高い一方でもろい性質があるので、製品が欠けるのを防ぐために通常使用しているエンドミルとは違うエンドミルを使用するなど工夫して加工をしました。

その他の加工事例についてはこちら「実績紹介」をご覧ください。

まとめ

焼結合金は耐摩耗性・耐久性・耐熱性・耐食性にすぐれ、自動車、電子機器、産業機械など幅広い分野で使用される材料です。
一方で、高い硬度により、加工時に製品欠けや工具の激しい摩耗が起こります。そのため、焼結後の加工には高い技術と工夫が必要となります。
バンテックでは焼結合金の加工に豊富な経験と知識を持っています。お客様の要望を踏まえ、さまざまな観点から最良の加工方法を提案し、的確な加工を行います。
焼結合金の加工はバンテックにご相談下さい。

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