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技術コラム

加工について

真鍮の切削加工における注意点と加工事例

真鍮は、銅と亜鉛を混ぜ合わせた合金で、別名「黄銅」や「ブラス」とも呼ばれます。真鍮は、その美しい金色の光沢と優れた加工性から、多くの産業で重宝されています。本記事では、真鍮の特徴や種類、切削加工の注意点について解説し、実際のバンテックでの加工事例を交えてご紹介します。

真鍮の特徴

真鍮は、銅と亜鉛の合金で、その成分比率によって多様な特性を発揮します。以下に、真鍮の主な特徴をまとめました。

優れた加工性

真鍮は、加工しやすい銅を含む合金であることから、切削加工やプレス加工が容易なため 、複雑な形状の部品を精密に加工することが可能です。これにより、自動車部品や電気接続部品、装飾品など、さまざまな製品に使用されています。

高い耐食性

真鍮は耐食性に優れ、湿気や化学物質に対する抵抗力が強い材質です。このため、水道管や船舶の部品など、腐食が問題となる環境での使用に適しています。しかしながら、表面の黒ずみなどが発生しやすいため、保管環境には注意が必要です。

美しい外観

真鍮の金色の光沢は、装飾品やインテリア、建築材料など、美観を重視する用途に最適です。表面の仕上げやコーティング(メッキ)により、さらに美しい外観を保つことができます。一方で、真鍮特有の経年劣化した外観も好まれており、酸化剤に漬けるなどして錆びの濃淡や深みを与え、より味わい深い仕上がりにするエイジング加工も行われています。

真鍮の種類と用途別の選び方

真鍮には、成分比率や特性に応じてさまざまな種類があります。以下に代表的な真鍮の種類を紹介します。

C2801

特徴

C2801は銅と亜鉛の比率が約60:40の合金で、一般的に「黄銅」と呼ばれています。この合金は、加工性、耐食性、導電性のバランスがよく、多くの用途で使用されます。プレス加工や切削加工を容易に行うことができます。広く流通しているためコストパフォーマンスが高く、真鍮系の材料としてよく選ばれる材料です。C2801Pのように、末尾に「P」を使う場合がありますが、「P」は板(Plate)を意味する記号です。つまりC2801Pとは、C2801の板材という意味になります。

主な用途

建築資材:ドアノブ、ハンドル、装飾金具など
電気機器:スイッチ部品、コネクタ
配管材料:水道管、バルブ

C3604

特徴

C3604は銅と亜鉛の合金に鉛を添加した「快削黄銅」として知られています。鉛の添加により、切削加工性が飛躍的に向上し、高精度な部品の製造が可能です。C2801と比較して、C3604のほうが反りにくく切削性がよいため、高精度を求める製品によく用いられます。一方でコストが高めとなっています。

主な用途

精密機械部品:ギア、バルブ、ネジ
電子機器部品:コネクタ、ピン、端子
自動車部品:エンジン部品、接続部品

C2600

特徴

C2600は、銅と亜鉛の比率が約70:30の合金で、「真鍮板」として広く利用されています。亜鉛の割合が少ないため、柔らかく、絞り加工性が高いです。冷間加工や熱間加工が容易という特徴もあります。

主な用途

建築装飾:装飾パネル、エンブレム
楽器:トランペット、サックス

C2680

特徴

C2680は、銅と亜鉛の比率が約65:35の合金で、亜鉛の含有量が比較的高く、強度と硬度が増しています。黄銅2種や七三黄銅と呼ばれており、C2801と並んで安価なため、板材などで多く流通しています。

主な用途

産業用部品:ベアリング、ギア
装飾品:ジュエリー、インテリア

真鍮の切削加工のポイント

真鍮の切削加工を成功させるためのポイントを以下にまとめました。

切削液の使用

切削液は刃先の冷却と潤滑、切りくずの排出を助け、工具寿命を延ばす役割があります。真鍮加工では、水溶性切削液が一般的に使用されます。

バリの抑制

真鍮は加工中にバリが発生しやすいため、適切な切削条件の設定と、バリ取り工程の追加が必要です。刃先の角度や切り込み量を調整することで、バリの発生を抑えることができます。

加工環境の管理

真鍮は柔らかく、加工時に熱が発生しやすいため、冷却装置の使用や適切な換気が重要です。高温環境では加工精度が低下する可能性があるため、作業環境を管理することが求められます。

工具のメンテナンス

真鍮の切削加工では、工具の摩耗が大きいため定期的なメンテナンスが必要です。刃先の再研磨や工具交換を適切に行うことで、安定した加工品質を維持できます。

当社での実績


製品名: 固定ナット
材質: C3604(電解ニッケルメッキ)
加工ポイント:
旋盤加工の後にマシニングで二次加工をした試作品です。真鍮の中でも加工しやすく反りにくいC3604を選択し、電解ニッケルメッキを施して、耐食性を高めています。精度要求は、幾何公差30μm、寸法公差±30μm程度でしたが、旋盤加工とマシニング加工それぞれの加工精度を考慮し、最終的な精度を出すことに苦労しました。旋盤とマシニングを両方所有し、技術力の高いバンテックだからこそ製作できた事例となります。

まとめ

真鍮は、その優れた加工性と美しい外観から、多くの産業で利用されています。切削加工においては、適切な工具選定や加工条件の設定、バリの抑制など、いくつかの注意点を押さえることで、高品質な製品を製造することが可能です。
バンテックでは、真鍮の切削加工において、マシニングセンタを用いた豊富な経験・実績があります。お客様の要望に応じた対応が可能です。また、他社で断られた難加工も弊社では加工できた事例も多数あります。
真鍮の加工はバンテックにご相談ください。

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